だから池月第15号

池月バンザイ

今回はいつもとは趣向を変え、先ごろ北陸町の酒屋の会加盟店・銘酒のモリヘイ(能美市栗生町・店主 森 昭一郎)にて行われた「池月の杜氏、川井大樹氏とひやおろしを楽しむ会」について、銘酒のモリヘイ・立花氏がレポートします。

会を開いたきっかけ

 ここ数年、当店では店内でお酒にまつわるお話をしながら日本酒を試飲する会を行っています。「楽しかった」「またやってほしい」との参加者からの声を多くいただき、また新米酒屋である私(同店 娘婿)としてもよい勉強の機会になることから、これまで数回、その時々でテーマを変えながら回を重ねてきました。その発展型として、この夏に更新した店内の日本酒用冷蔵ショーケースのお披露目も兼ね、川井大樹氏からお酒造りの現場のリアルなお話をしていただきながら、出来立てのひやおろしを楽しんでいただく会を開きたいと考えました。

興味を引き付けた川井杜氏のお話

 まずは川井杜氏から、お酒造りに携わるきっかけや大好きなお酒への思い、お酒造りの一連の流れ、師事した二人の師匠・農口さんと柳矢さんについて、そして今年のひやおろしについてなど、蔵内の写真をプロジェクターで投影しながら約1時間たっぷりとお話していただきました。中でも興味を惹いたのは、昔ながらの設備(「江戸時代の酒蔵」と言われているとか…)をそのままにほぼ手づくりされていることだったようで、そのノスタルジックな風景と、その中で奮闘されている蔵人たちの真摯な姿勢に皆感銘を受けながら聞き入っていました。

お待ちかねの試飲タイム

 続いて参加者お待ちかねの試飲に入り、まずは池月純米ひやおろしと池月純米との飲み比べから始め、普通酒、本醸造、大吟醸、さらに蔵元から特別に提供していただいた純米大吟醸生原酒へと盃を進めていく蔵にはもはや試飲の枠を大幅に超え、腰を据えてがっつり呑むモード。それにしても、隣り合った全く知らない人間同士をあっという間に馴染ませてしまうお酒に力って本当に偉大です。笑い声はなかなかやまず、最後のお客様がお帰りになったのは開始から3時間を大幅に超えた頃でした。

今年の池月純米ひやおろしの評価は・・・

 皆さまお帰りの際にはたくさんお買い上げ頂き感謝の一言に尽きます。そして当店で仕入れしたすべてが完売、これが今年の池月純米ひやおろしにいただいた何よりの評価だと思います。


参加者の声

 北村共二様(76)能美市

酒への心意気感じ酒蔵に行きたい

 若い杜氏が酒造りを志した経緯や、その真面目な話しぶりから、これから池月でしっかりした酒を造っていくんだというんだ心意気が強く伝わり、とても感銘を受けました。「江戸時代の酒蔵」とも言われていましたが、与えられた条件でできる限りのことをしようという姿勢も素晴らしいと思う。当時といえば職人気質の頑固者というイメージだが、ちょっと違ってとても柔軟なんですね。古い建物や製造機械などを見るのも好きなので、ぜひ酒蔵見学に行ってみたいと思いました。

 こうやって知らない人同士が楽しく話できるのも酒のいいところだし、何より誘ってもらえたから。偶然参加していた同級生にも久しぶりにも会え、参加してよかったと思いました。

 池月やひやおろしと大吟醸を購入して帰りましたが、ひやおろしは自分ですぐ呑んでしまい、大吟醸は知り合いの集まりに持っていったところ、その場に合った酒の中でも真っ先に空になるほどの大好評でした。

川井氏のコラム③

 今回はいよいよ日本酒の工程についてお話します。

 とはいえ、すべて文章で説明いたしますと、ご理解いただくのは大変難しいものになりますので、まずは左の図をご覧ください(上の画像をご覧ください)簡単に図で表しますと、大体このような工程になります。(本来の工程はもっと複雑ですが・・・)

 さて、図の最初に「玄米」、次に「白米」とあります。まずは玄米を、目標をとする数値まで精米(玄米の外側を糠として削ること)して白米にします。よくお酒のラベルに「精米歩合〇〇%」や「〇〇%精米」と書かれているアレです。一般的にこの%の数値が小さいほど繊細できれいな味わい、大きいほど力強くて濃い味わいになります。この精米作業ですが、池月では、丁寧で信頼できる金沢市の精米専門業者さんに委託しています。

 次に精米された「白米」を「洗米」しつつ「浸漬」(水につけて吸わせる)します。この作業は、図では省かれていますが、図の「白米」と「蒸米」の間にあたります。

 ここが日本酒造りにおいて一番大切な工程であるといっても過言ではありません。清浸時間が長すぎると蒸米が柔らかくなり、逆に短すぎると蒸米が固くなるので、この先の工程である「麹」造りや、「醪」の発酵に影響し、目的とする酒質にならなくなります。その為、「洗米」作業は吟醸酒以下のお酒では洗米機で「釜屋」(洗米、蒸きょう作業の責任者)さんが洗米しますが、上のお酒では全員総掛かりで手洗いします。なおかつ、「清漬」ではストップウォッチを使用し10秒単位で清浸時間を管理します。

 おっと、やはり今回ではすべての工程をご説明しきれませんでした。「蒸米」からの工程は次回にお話しいたします。