だから池月 第22号

池月バンザイ

 今から13年前、これまで日本酒に全く興味がなかったころ、「池月うすにごり」との出会いによってすっかり日本酒に魅了されたという浅香卓也さんに、日本酒や池月の魅力について聞いてみた。「いろんなお酒を楽しむ中で、特に造り手の顔が見えるお酒は格段の美味しさを感じます。池月もその一つです」と話してくれた。

池月ショック

地酒を原点に

 それまでは、ビールかワインをたしなむ程度だったのですが、池月うすにごりを飲んだ時のショック(笑)から日本酒党になったという。「以来、地元には美味しいお酒があるかもしれないといろいろ調べては飲むようになりました。」といい、「ただ何もわからないものですから、酒屋さんに足を運んだり、雑誌や専門誌などを読んだり、好きだから自分なりに勉強しています。私にとって池月は、日本酒や地酒の原点とも言えます」と、もはや趣味の範囲を超えてるようだ。

6年連続で蔵見学

酒質+人柄=味わい

 思ったら即行動という浅香さんは、能登の蔵めぐりの日帰りバスツアーや酒屋さんの日本酒の会など、機会を見つけては積極的に参加する。池月特約店の伸栄館さんの瀬戸社長の声掛けで鳥屋酒造さんの蔵見学には6年連続で参加している。「蔵内に入った瞬間、心地いい華やかな香りに出迎えられ、川井杜氏さんの丁寧な説明や川合社長さんの酒造りの思いを聞かせてもらい、あの時の衝撃は造り手の人柄そのものだったことに気づかされました。お酒は味だけで楽しむのはもったいないです。」との感覚は、鳥屋酒造の蔵見学で得たという。

全量ふなしぼり

手間よりこだわり

 いろんな蔵元に足を運び酒造りを見てきた浅香さんは池月の酒造りについて「第一に、全量ふなしぼりでお酒を搾っていることに驚きました。私の知る限りでは池月さんだけです。手間暇や効率を考えれば別の方法も取れるのですが、『池月の味』としてこだわっているところに愛着を感じます。だから池月はとても贅沢なお酒だと思います」といい、今も槽(ふね)から搾られたお酒の味は忘れられないという。

思いで選ばれた酒

出会いと会話楽し

 日本酒好きの口コミで集う「持ち寄り会」にも参加させてもらっているという。この会は、自分の好きなお酒を各自が持ち寄って楽しむという集まりで年に4,5回開かれている。「私も6年ほど前から仲間入りさせてもらっていますが本当に楽しい集いです。いろんなお酒に出会えることはもちろん、いろんな方たちとの出逢いにもありがたくいつも楽しみにしています」といい「持ち寄る酒も様々です。自分好みや一緒に楽しむ人への思いだったり、故郷だったり、その人の思いで選ばれた酒たちですから味わい以上の美味しさがあります。お酒を囲んでの会話も一入(ひとしお)です」と、この会はいわば日本酒応援団のようだ。

ローカル感が好き

今のままの池月で

 

 最後に、池月への思いとして「昔ながらのローカル感が大好きです。完璧ではないからこそ親しみやすさを感じます。若い川井杜氏さんの成長とともに、池月のお酒の伸びしろは確約してもいいほどです。流行を追いかけずに『今のままの池月』を、今後とも私たちを楽しませてください」という浅香さんは、まさに池月応援団と言っても過言ではない。今日は、貴重なお話をありがとうございました。

聞き手 谷澤雅視

川井杜氏のコラム⑧

 皆さんこんにちは。毎日暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?

 さて、今回のコラムは前回に引き続き、「酵母」の2回目です。「酵母」と一口に言っても、いろんな「酵母」が存在し、その数として約500種類が知られています。そのすべてが「単細胞」の生き物で、大きさは5~10㎛(マイクロメートル。1㎛は0,001㎜)くらいです。多くは球形、楕円形をしていますが、なかにはレモンのような変わった形をしているものもあります。増殖の仕方は2種類で、「出芽」して増えるものと、「分裂」して増えるものがあります。

・酵母はどこにいるの?

 「酵母」は、自然界にはごく普通に存在するもので、糖濃度の高い環境を好みます。なので、主に果実の実や、樹液、花蜜などに多く生息しています。そのことから、「世界で一番最初のお酒」は、今より約8000年前のメソポタミアにてシュメール人が、ブドウの実が入った壺をうっかり放置したところ、ブドウの皮についた「酵母」がブドウの実を自然発酵(アルコール発酵)して偶然できた、と言われています。

パン作りにも使います

 「酵母」の中でも最も有名なものは「サッカロマイセス・セレビシエ」という「酵母」です。これは、パンを作る際に使用する「イースト」や酒を造る際に使用する「イースト」や「醸造酵母」として知られています。

 ここで、酒の場合は「アルコール発酵」が必要だから「酵母」は必要なのはわかるが、なぜパン造りに「酵母」が必要なのか?アルコールいらないじゃん。と、疑問を持つかたもいるかもしれません。これは、パンを作る際、パン生地に加えられた「酵母」は、小麦粉に含まれる「麦芽糖」や、添加された「ショ糖」(砂糖)を取り込み、「アルコール発酵」して「アルコール」や「エステル」、「炭酸ガス」を発生させます。この「炭酸ガス」によって生地を膨らますのです。「酵母」が作る「アルコール」や香気成分である「エステル」は、パンに香りと豊かな風味をもたらします。「酵母」が発する「炭酸ガス」の代わりに「ベーキングパウダー」でも化学反応による「炭酸ガス」を発生させることはできますが、気泡の構造が異なるので「酵母」を使用したときのようなモチモチした食感にはなりません。なので、プロは「酵母」を使うのです。

 またしても、紙面が・・・次回(酵母の最終回)は、いよいよ「清酒」と「酵母」の関係について、ご説明いたします。お楽しみに!