だから池月第7号

「池月」誕生秘話

~蔵元と共に歩む~ その壱

 新生「池月」の立ち上げ直後からその経緯を見守り、また日々助言をいただいております日本酒アドバイザーの谷澤雅視氏に、これまでの道筋を裏話も交えて書きとめて頂きました。数回に分けての連載ですが「池月」の歴史ともいうべき内容です、皆様是非ご一読ください。


〇希望の船出

 「池月」が発売されたのは平成7年初秋。地元の酒屋数件で新ブランドとして世に出した。鳥屋酒造では、昭和38年から販売していた「池月 馬印」を、品質のレベルアップとラベル・書体のリニューアル、特定の販売店で展開し、本醸造・純米・みなもにうかぶ月・大吟醸の4種類で発売した。

〇発信にまい進

 新商品の発売とあって酒屋たちは希望を持って意気揚々と商売に傾注していく。が、当時の「池月」は能登の鳥屋町周辺で販売されていただけの全く無名の銘柄だった。ましてや能登の小さな蔵元。テレビコマーシャルはもちろんのこと販促品一つない。酒屋たちは、当然のことと理解して、手づくりのポップ・チラシ、試飲用にと惜しみなく飲んでもらい続けながら、声を大にして「池月」の発信にまい進する。

〇程遠い数字

 販売店の一人、おさけやさん西本の西本久孝さん(故人)は「思いをお伝えしながら『池月』をお勧めする”喜び”と”楽しさ”は、今まで味わったことのないものだった。半信半疑で買ってくださったお客様から『おいしかった』の一言が何よりの支えだった」と当時を振り返る。ただ、思いとは裏腹になかなか実績はあげられなかった。

 そんな中でも予定の本数は販売できたものの、伸栄館の瀬戸義久さんは「蔵元さんの私たちへの信頼と酒造りの意気込みにお応えできるまでにはまだまだ程遠い数字だった」と、責任を強く感じていたという。

〇迷いを生んだだけ

 そこで、翌8年初めに熟成を待たずして新しく生酒の限定販売に踏み切る。本醸造→純米→みなもと次々と発売するものの、結果として、商品アイテムばかり増えて実績向上につながらず悶々としていた。ただ、間口を広げたに過ぎず「迷いを生んだだけ」と反省する。

〇お役立ち・・・三方よし

 そんな中、当時から酒類流通に詳しい醸会タイムス社北陸支局の谷澤記者を紹介され相談したところ「蔵元と共に歩む_。皆さんの取り組みは”誰のためのお役立ちなのか”考えれば答えは一目瞭然です。『三方よし』・・・。焦らずじっくり取り組むことです」と、売ることより伝えることを優先し、人と人のつながりの中で応援してくれるお客様づくりが大事とアドバイスを受けた。

〇勉強会で切磋琢磨

 翌9年、同氏から生酒の見直し策として「うすにごり生原酒」の発売と販売方法の提案を受ける。その頃から、さらなる酒屋間の交流と情報交換、商売へのスタンスなどを学ぶために同氏を招いての勉強会を開くことで切磋琢磨するようになった。

〇伝え続ける環境づくり

 「うすにごり生原酒」は季節限定の予約販売として取り組み、12月発売の3か月前から消費者に蔵元の話を繰り返し行うというもの。

   「知っていただきたい酒蔵の味があります」

を統一キャッチコピーとし、共同でポスター、チラシを手作りし、予約を受けたお客様を短冊に記して店内に飾るというものだった。「最初は半信半疑だったが、店内の短冊を見て声をかけてくれたり、注文を下さる方もいて、思いもしないほど予約が増えていきました」と、酒屋さんの中には600本超の予約をもらえたという。

〇経験は確信へ

 「味もわからない酒なのに私を信じて予約してくださる。こんな嬉しいことはない。谷澤さんは『否定からは何も生まれないが、肯定することで新しい世界が見える』と教わりました。その通りです」といい、「基本はコツコツですが、この経験で確信が持てました」と西本さんら「池月」特約店は、お客様への感謝と蔵元を伝えていく自信を身に付けた。

 蔵元と酒屋、お客様との三人四脚がはじまることになる。 次号に続く

私と池月

「味喜寿司」 下久保 盛幹氏

富山県高岡市城東1-9-32


●気になる看板

 私自身、金沢の出身で、金沢に行く道中、池月の大きな看板をいつも見てました。4~5年前、その看板のある酒屋さんで池月を購入して飲んでみたところ、香りも良く美味しい、また女性にも美味しく呑んで頂けるのではないかと思い、お店で取り扱うことにしました。

●旬の味と旬のお酒

 今の時期でしたら、旬のカニ料理と会う「ひやおろし」をお勧めしています。

●魚料理と池月

 池月はあっさりして口当たりがよいので、カニ料理をはじめ、どんな魚料理にも合います。邪魔せず魚を引き立たせてくれます。お客様のお好みにもよりますが、純米酒については常温か冷やをお勧めします。

●女性にも好評

 以前、中能登の酒蔵見学をさせていただきました。手造りで丁寧に作っておられ、大変好感を持ちました。当店では池月の女性ファンも多いです。期待することは今まで通り、手造りで、旬の料理に合う、香り高く美味しい日本酒を造っていただきたいです。