だから池月第5号

「柳矢流」を目指して

 今回は、鳥屋酒造で今期が2度目の酒造りに入られた蔵人「川井大樹」さんのご紹介です。杜氏を目指して柳矢流に弟子入りし「柳矢流」の酒造りに取り組まれています。


川井大樹氏  「蔵人」

■酒造りに導かれ

ー酒造りに携わるきっかけは

 大学卒業後、鋼材加工機の営業として就職。群馬・前橋勤務で担当は新潟県でした。そこで出会った「〆張鶴」(宮尾酒造)の旨さは今でも覚えています。その後、転勤のたびに地酒を楽しむようになっていました。30歳を迎えたころ、将来を考えるようになって自分がしたいことは「酒造りに携わること」に気づき一年発起、地元に帰って蔵元を探し始めました。思えば幼いころ、酒蔵に努めていた祖父からよく話を聞いていたのですが、とても楽しそうだったという記憶が残っていました。

「常きげん」の鹿野酒造さんに行かれたきっかけは

 当時、蔵人を募集されていました。以来11年間お世話になりました。

■杜氏へのあこがれ

ーなぜ、鳥屋酒造さんに移られたのですか

 酒造りの醍醐味は何と言っても杜氏職です。憧れでもあり夢ですね。そんな思いを抱いていたころ、知人から「柳矢杜氏さんが後継者を探されている」とのお話を聞き、すぐに柳矢杜氏さんの門を叩き「弟子にしてほしい」「修行をさせてください」とお願いに上がりました。当初は喜んでくれましたが「農口杜氏さんの了解を得なければ」と、わざわざ出向いて快諾を頂いたと聞きました。

■人として尊敬

ー筋を通されたのですね。柳矢杜氏さんを一言でいうとどんな方ですか。

 どんな環境でもベストを尽くす人です。それに、誰よりも働きますし、どんな仕事も真っ先に行動されます。頭の中は造りでいっぱいのような人です。また、蔵人に対する声をかけ、体調管理への気遣いなど、私たちを家族のように扱ってくれます。造り手以上に人として尊敬しています。「こんな時、柳矢杜氏さんはどうするだろう」と、いつも考えるようにしています。一言では無理でしたね。

■辛さは一度もない

ーお酒には人柄が出ると言われます。

 そうだと思います。柳矢杜氏の人柄がそのまま蔵内の明るさになっています。だから、酒造りでの辛さは一度も感じたことはありません。本当に楽しいです。自分が関わったことがたれ口から流れる酒になる。結果、良くも悪くもやり甲斐として受け止められます。あと、販売店さんとお客様が池月を磨いてくれていると思います。

ー川合さん自身、今期で2回目の酒造りを終えましたが

 米の旨みが出て、昨年に比べても遜色ない仕上がりになったと思います。

■つながりに魅力

ー「皆さんが磨いてくれている」という言葉がありましたが

 これほど皆さんに愛されている蔵元はないと思います。特に、販売店さんとの強いきずなはお酒の安心感につながっていますし、販売店さんを通じてお客様の声も伝わってきます。これって、造り甲斐や責任が持てますから冥利に尽きます。皆さんに背中を押してもらっているようで励みになっています。

■もっと造りがしたい

ー将来の目標を教えてください

 まず、柳矢杜氏さんの後継者に成りうる人間になりたい。その為に人間力を含めた柳矢流をマスターしたいです。それから、もっと「池月」の酒造りがしたいです。

私と池月

「鰯組(いわしぐみ)」 東 賢栄 氏

金沢市片町1-7-13 昭和61年10月12日創業

 金沢市片町にて、古き良き町家の建物に店を構えております。


■池月とのきっかけは?

 お酒の師匠でもありました、おさけやさん西本・故西本久孝氏から「この蔵を応援してくれないか」とお願いされた事が始まりです。

 当時、西本さんから、柳矢杜氏は鳥屋酒造ともう一つの蔵を掛け持ちしており、鳥屋酒造の方に造りを専念してほしく、一緒に応援してほしいとのことでした。

 私自身、最初は「池月」の前形でもある「能登正宗」も知りませんでしたが、池月を試飲し、違和感がなく、お酒らしいお酒でしたので、安心してお酒のラインナップに入れたことを覚えています。

■お客様の反応は?

 当店では、「池月うすにごり」「池月純米酒」「池月普通酒」を提供しています。うすにごりは旨みがありながらもすっきりしており、池月を始めて飲まれたお客様は、よくこのお酒のことについて聞いてこられます。

■池月に合う、料理は?

  やはり、濃い味のものが合うと思います。また、鍋とかではなく鰯の南蛮漬けや鰯のタタキ、塩焼きなどに合うのではないでしょうか。お醤油との相性がいいですね。

■池月のイメージや良さは?

 蔵に行ったとき、温かさや大らかさ、そして親しみを感じました。極端かも知れませんが、何でも触ってもいいみたいな感じです。(自動化された)メカニックな蔵ではこの感じは出ませんね。

■食中酒としての池月

 食中酒としての池月はいいですね。香りや味だけでのお酒ではやはり飽きてしまいます。常連のお客様の方が定番として飲んでもらえているところからも、いい人、いいお酒に巡り合えたと感じています。

日本酒豆知識⑤

 日本の国酒といえば清酒と焼酎ですが、この10数年で様相が大きく変わっています。大半の都道府県では焼酎の消費量が清酒を上回ったのですが、そんな中で焼酎より清酒が上回っている府県は京都府、福井県、石川県、富山県、、新潟県だけです。実に北陸三県すべてで清酒が愛されています。また北陸三県は成人一人当たりの清酒消費量も上位を占めています。この背景として、北陸の蔵元の米へのこだわりがあります。酒造りに適した「酒造好適米」の使用比率が全国で最も高く精米歩合は60.2%(全国平均67.1%)と最も高精米です。

 特定名称酒の構成割合が65%(同31.4%)と突出した数字からも北陸清酒は全国でも優れた清酒を要しており、地元の名産の一つとして誇れるものです。

 石川県に限っては80.5%(全国3位)に至ります。

 現在、北陸三県には88の蔵元が存在します。地元の食文化と共に、良質な北陸文化を発信していこうではありませんか。