去る平成30年4月18日、金沢のホテルKKRにて、平成29年酒造年度金沢国税局酒類鑑評会の授賞式が催されました。我らが「池月」鳥屋酒造からも、田中事務と川井杜氏が出席されました。「池月」は「金沢酵母吟醸の部」に出品し、栄えある「優等賞」をいただきました。
杜氏就任2年目の川井杜氏、著名な先輩杜氏と肩を並べてさぞ緊張したことでしょう。私たちも大変うれしく、また誇らしい気持ちでいっぱいです。
鳥屋酒造は市販の「池月 大吟醸」を出品しており、定番酒での受賞となります。鑑評会という酒造りの上での評価ですが、これをより励みに更なる酒質向上に努めてくださることでしょう。川井杜氏は、鑑評会での受賞もさることながら、皆さんの「美味しい」という一言が何よりうれしいと仰ります。
ただ私たち池月特約店には、どちらも嬉しくどちらも有難いことです。早くも吉報を聞いた池月ファンの方から、お祝いや励ましのお言葉までいただいております。賞を頂けたのはあくまで池月という日本酒ですが、それを自分のことのように喜べる酒屋、また自分のことのように喜んでくださる皆様がいる…。これが「池月」の強みのように思えてなりません。これからも皆様と共に、たくさんの喜びを味わいたいと思います。
「この2年間、多くの皆様に助けられながら精いっぱい頑張らせて頂きました。まだまだ力不足ではありますが、ようやく納得のいく大吟醸ができました。是非、市販酒にてお試しくださいね。」
「常々のご愛顧ありがとうございます。この受賞は、ひとえに皆様方のおかげと感謝しております。
地元に根付いた酒造りをと思っておりますので、全国の鑑評会には出品しませんが、鳥屋酒造として今後とも良い酒造りに慢心していきます。新杜氏を含め、ご声援のほどよろしくお願い申し上げます」
「私の下で3年間たくさんのことを学んだと思いますが、2年目での受賞は本当に素晴らしいことです。私自身の入賞の時よりも増して嬉しく、誇らしく思います。ますます良い酒を造り、池月ファンをもっと喜ばせて欲しい。
これからも只々真面目に、一生懸命酒造りに専念し、池月ファンと酒屋さんに愛される杜氏を目指してください」
今回のテーマは「蒸米」です。少々科学(理科?)の用語が出てきます。中学校時代に戻ったつもりになってお読みくださいね。
ところで、なぜ日本酒造りでは米を蒸さなくてはならないのでしょうか?以前の「麹」の回で、酒のアルコールは、米の中の「デンプン」を「麹」の酵素作用にて「糖」に変え、その「糖」を「麹」が食べてアルコールを産出する…と書きました。(覚えてますか?)
この、「デンプン」が今回の主役です。蒸す前の白米の中には約75%の「デンプン」が含まれています。ただし、この蒸す前の「デンプン」は分子が整然と並んだ結晶構造となっており、「麹」の作った酵素が糖化できないデンプンなのです。この状態のデンプンを「βーデンプン」と言います。この「βーデンプン」を水と共に加熱すること、つまり「蒸す」ことによって分子が整然と並んだ結晶構造がほぐれた状態になります。この状態のデンプンを「αーデンプン」と言い、初めて「麹」の糖化酵素作用を受けることになるようになるのです。
また、この「αーデンプン」は、蒸米をそのまま室温で放置すると、徐々に「βーデンプン」に戻っていきます。この米の中の「βーデンプン」を「αーデンプン」にすることが「蒸し」の主目的ですが、蒸すことによって白米の雑菌を殺菌することも大切な目的ですし、蒸す前の米の中には、「不飽和脂肪酸」というものが含まれており、これはお酒のいい香りを作ることを邪魔します。この「不飽和脂肪酸」は、「蒸す」ことによって蒸気とともに揮発し、なくなってしまいます。これも大切な目的です。
ここで皆様、疑問に思われませんか?なぜお米を「炊く」のではなく、わざわざ「蒸す」のでしょう。
その理由は
第一に、「炊いた」お米は柔らかすぎて「麹」を造ること、すなわち麹菌を増殖させにくいということがあります
第二に、「醪」として発揮させるには、やはり柔らかすぎて予定よりも溶けすぎてしまい、いいお酒にはならないのです。
そのような理由からお米を「蒸し」て「おこわ」状態にしたほうが都合がいいのです。
今回は少し難しかったでしょうか? では,次回をお楽しみに!